【完全保存版】代替シーフードの開発に取り組む企業をまとめてみた(後編)
|前編に続く今回の後編では、アメリカの企業を中心にその他、ヨーロッパの企業もいくつか紹介していく。培養魚だけでなく、完全にトマトやなすなどの野菜から完全にプラントベースのお寿司を作る驚きの企業も紹介する。
前編はこちらから↓
【完全保存版】代替シーフードの開発を手がける世界の企業7選(前編)
●目次
・BlueNalu(アメリカ)
・Ocean Hugger Foods(アメリカ)
・Good Catch(アメリカ)
・New Wave Foods(アメリカ)
・Hooked(スウェーデン)
・Novish(オランダ)
・Schouten(オランダ)
・Jack&Bry(イギリス)
・まとめ
●BlueNalu(アメリカ)
BlueNaluは、サンディエゴを拠点とし、培養魚介類の開発に取り組んでいる。同社は、共同創業者たちがハワイで出会ったことから始まり、会社名の「BlueNalu」は、ハワイ語から由来しており、「Nalu」はハワイの言葉で、一般的には海や波を指す。同社は、世界的な魚介類の需要と、今日の重要な環境問題や持続可能性の問題に責任ある解決策を提供することを目的としている。
2021年1月には、6,000万ドル(約65億円)の資金調達を完了したことを発表した。この資金の一部は、試験的な生産施設の建設と、全米の様々な外食産業での市場テストの開始に充てられる。日本の企業では、昨年、住友商事が出資している。
大規模な培養魚介類製品施設の商業化に向けて大きな計画がされている。昨年6月、同社は管理、研究開発、製造のためのスペースを現在の6倍に拡大した新施設を建設した。新施設には、細胞を利用した様々な水産物の商業生産を目的としたGMP(Good Manufacturing Practices)試験規模の食品工場が併設される。研究開発と小規模な試験から始め、市場調査のテストに移行していく。施設では、ひれ魚から甲殻類、軟体動物までの培養魚介類を生産する予定であるという。
今年後半には、マヒマヒとクロマグロの両方の製品をアメリカの外食産業に投入する予定である。2~3年後に試験市場に製品を投入し、5年以内に初の大規模生産施設を開設する予定だ。
●Ocean Hugger Foods(アメリカ)
Ocean Hugger Foodsは、プラントベースの代替シーフードの製造・販売を行う企業である。水産業が海にもたらす環境破壊を緩和することを目的として2016年に設立された。トマトをベースにした生マグロの代替品である「Ahimi(アヒミ)」と、ナスをベースにしたウナギの代替品である「Unami(ウナミ)」を、アメリカ、カナダ、カリブ海諸国、イギリスの外食産業の顧客に販売している。
「アヒミ」は、生のマグロに代わるうま味を追求した代替マグロである。水銀やPCB(ポリ塩化ビフェニル)などは一切使用せず、トマト、グルテンフリー醤油、砂糖、水、ごま油などのシンプルな材料だけで作られている。
「ウナミ」は、食感にこだわったユニークな代替うなぎである。ナス、グルテンフリー醤油、みりん、砂糖、米ぬか油、藻油、こんにゃく粉などの材料から作られている。うなぎの香ばしい食感とうまみが凝縮されている。両商品とも100%プラントベース、グルテンフリーである。
新型コロナウイルスの感染拡大でにより、外食産業が低迷したために、同社も2020年6月に事業を一時停止せざるを得なくなったが、3月1日にタイの大手食品メーカーであるNove Foods Limited(NR Instant Produce Public Company Limited(NRF)の完全子会社)との合弁会社であるOcean Hugger社の設立により、再スタートを切った。このOcean Hugger社を通じ、今年の後半には小売店と外食産業の両方で、プラントベースのシーフード製品を世界的に展開する準備を進めている。
●Good Catch(アメリカ)
Good Catchは、プラントベースのツナとフィッシュバーガーを手掛ける企業である。
同社のプラントベース商品では、エンドウ豆、ひよこ豆、レンズ豆、大豆、ソラマメ、白いんげん豆の同社独自の6種類の豆類のブレンドしたものが使われている。これらの豆類を完璧な比率でブレンドすると、魚介類に似た驚くべき食感になるという。藻類油によって、オメガ3脂肪酸とより海産物のような風味が加わるということだ。脂肪分が非常に少ないにも関わらず、タンパク質、食物繊維、ミネラルがたっぷり含まれている。
現在、プラントベースのツナでは、以下の3種類がある。
・「Naked in Water」:巻き寿司、サンドイッチ、鍋焼き料理などに合う。
・「Mediterranean」:にんにく、ハーブ、甘唐辛子、スパイスを効かせたツナ。パーティーの大皿に盛り付けたり、ピタサンドの中に入れたり、サラダにトッピングしたり、クラッカーと一緒に食べたりするのに合う。
・「Oil & Herbs」:外出先での食事に最適である。サラダの上に乗せてタンパク質を増やしたり、パスタに混ぜたり、お気に入りの前菜の盛り合わせなどに使え、濃厚で満足感がある。)がある。
冷凍食品では、以下の3種類がある。
・「Plant-Based Burgers, Classic Style」:シーフードのパテで、冷凍庫からそのままフライパンで焼くことできる。独自の6種類の豆類のブレンドを用い、ネギ、セロリ、海塩、胡椒で味付けされている。
・「Plant-Based Crab Cakes, New England Style」:パプリカ、青ネギ、パセリ、スパイスで味付けされており、カニ肉のような食感がある。こちらも冷凍庫からそのままフライパンで焼くことができる。
・「Plant-Based Fish Cakes, Thai Style」:皮はカリッとし、中身はもちもちで、鮮やかな風味が特徴。レタスラップに入れたり、スイートチリソースを添えて伝統的なタイ料理の前菜としたりできる。こちらも同様に冷凍庫から出してすぐに調理できる。
●New Wave Foods(アメリカ)
New Wave Foodsは、プラントベースの代替エビを提供している。同社のNew Wave Shrimpは、海藻や緑豆タンパクなど、その他の天然素材を使用した、持続可能な植物性のエビの代替品であり、もちろん、乳製品、卵、魚、貝類などは使用されておらず、さらに、ピーナッツ、大豆、小麦なども含まれていない。
海藻によって、エビの食感と噛みごたえを再現している。原材料である海藻についても、環境への影響を考慮し、持続可能な方法で海洋で養殖されている。また、天然の植物抽出物を使用しており、海老のような爽やかさ、ほのかな香ばしさ、ほのかな甘みを与えているという。
現時点では、小売やオンライン販売の予定はないが、1月5日に、1,800万ドル(約19億5千万円)のシリーズA資金調達を完了したと発表し、レストランなどの外食産業向けに製品を販売する予定だ。将来的には、ロブスター、ホタテ、カニなどの代替品も開発する予定であるという。
●Hooked(スウェーデン)
2019年にストックホルムを拠点として設立されたHookedは、プラントベースの代替魚の開発に取り組むフードテック企業である。
同社の最初の商品は、ツナの代わりに使えるヴィーガン食品で「Toona」と呼ばれる。大豆タンパクを用い、ヒマワリ油、藻類を原料としており、17%のタンパク質が含まれている。高タンパクなだけでなく、オメガ3脂肪酸も含んでいる。食べ方としては、寿司、パスタ、サンドイッチ、サラダ、タコス、ピザなど、様々な食べ方がある。
今年の春には、同社の最初の製品である「Toona」は、スウェーデンのカフェ、サラダバー、寿司屋などのレストランで販売される予定である。
また、「Toona」に加えて、同じくプラントベースの鮭フレークを生産している。スウェーデンでの最初の発売後、2021年後半には国際的な展開を予定しているそうだ。
●Novish(オランダ)
Novishは、100%植物性の原料から代替魚を作っている。同社の製品は、海藻や藻類から着想を得た天然の香りが、美味しさを引き立て、魚に含まれている健康的な成分もすべて含まれているという。100%ヴィーガンで、大豆も含まれておらず、もちろん香料などの人工的な添加物も含まれていない。現在、スティック、バーガー、ナゲットなどの代替魚のシリーズの商品がある。
また、ドイツとオーストリアを拠点にヨーロッパ各地で展開するシーフード専門のファストフードチェーンである「NORDSEE(ノルトゼー)」で、Novishの2つの製品を導入し、「ベイクドフィッシュバゲット」と「フィッシュ&チップス」が発売されている。
●Schouten(オランダ)
Schoutenグループの一企業であり、植物性タンパク食品を取り扱っている。最初のSchouten社は、1893年に始まった。現在のSchoutenのヨーロッパのディレクターの曽祖父が、当時パン屋を始めたのが始まりだそう。1990年代には、植物性タンパク質の開発に取り組み始めた。
最初のプラントベース商品として、マグロの代替品であるTuNo(トゥノー)が発売された。小麦と大豆のたんぱく質、ヒマワリ油、天然香料を使用した100%プラントベースのマグロは、100グラムあたり17グラムのたんぱく質を含む。サラダ、ピザのトッピング、惣菜など様々な用途として使える。
他の商品では、ハンバーガーに用いられるパティ、スティック状、ボール状、ミンチされたものや、ナゲットファラフェル、ソーセージ、シュニッツェルなどがある。また、テンペ、豆腐の商品もある。主にオランダ、その他のヨーロッパ市場のスーパーマーケットなどで販売がされており、現在、50カ国で扱われている。
●Jack&Bry(イギリス)
Jack&Bryは、2019年に設立されたジャックフルーツ由来の代替肉を開発する企業である。世界で初めて、ジャックフルーツのペパロニ・スライスを発売した。現在、イギリス内のレストランなどに供給しており、ジャックフルーツのペパロニは、Papa JohnsとZizziなどのチェーン店のピザにも使用されている。
また、ジャックフルーツを使ったハンバーガー、ソーセージ、ミンチなどの商品をサイトで販売している。さらに、同社は今年、小売店での販売を開始するにあたり、125万ポンド(約1億9千万円)のシード資金を獲得した。
食感は肉に似ているが、トロピカルフルーツであるジャックフルーツには、ビタミン、ミネラル、カリウム、食物繊維、その他多くの抗炎症作用が含まれているそうだ。
今年、Neat Burger(ニート・バーガー)が、イギリス初のヴィーガンフィッシュバーガー「Filet-no-Fish burger(フィレ・ノー・フィッシュ)」のパティも、 Jack&Bryが手がけたものである。
●今後(まとめ)
世界の人口増加に伴い、食肉だけではなく、水産物の消費も増加しており、今後も消費量は増加すると予想されている。乱獲を防ぎ、地球環境を保護するため、また、マイクロプラスチックなどにより、汚染された水産物によって予想される人間への健康被害などを防止するため、既に多くの企業が立ち上がっていることが分かった。しかし、代替肉の市場に比べると、その規模はまだ小さく、今後も大きな動きがあると予想できる。
日本では、刺身や寿司など、特に魚介類を消費する場面が多いが、この機会にぜひ、魚を食べることと、その海への環境についても、考えてみてはどうだろうか。
参考
・BlueNalu
ARTICLE Report identifies top five cultured meat companies
Here’s why alternative seafood brands are betting on foodservice this year
米国の培養魚肉製造スタートアップBlueNalu社への出資について
・Ocean Hugger Foods
・Good Catch
・New Wave Foods
Shrimp alternative company ‘snaps’ into foodservice
・Hooked
Hooked Foods Secures $600K for Plant-Based Tuna
・Novish
Quick Service Seafood Chain NORDSEE Launches Plant-Based Fish Made by Novish
・Schouten
Dutch Plant-Based Pioneers Schouten Enters Alt Seafood With New Vegan Tuna
・Jack&Bry
ルイス・ハミルトンが出資するNEAT BURGERが、イギリスで初となるヴィーガンフィッシュバーガーを発売
London Startup Jack & Bry Announce US$1.73M Seed Funding For Jackfruit Alt Meat Product Range
Jack & Bry secures £1.3m investment as demand for plant-based meats soar