【完全保存版】代替シーフードの開発を手がける世界の企業7選(前編)
|「お肉の食べる量は減らしているし、お魚はまだせめていいよね...」「日本の美味しいお寿司はあきらめられないよ!」
プラントベースの食事を心がけてはいるものの、まだ魚などのシーフードを食べることは、避けられないと思っている方も多いのではないだろうか。実は、肉・乳製品だけでなく、シーフードの代替品を作っている企業も世界には数多くある。どのような代替シーフードがどのような企業から出されているのだろうか。前編では、以下の7つの企業を取り上げる。
●目次
●代替シーフードとは
① Thai Union(タイ)
② Avant Meats(香港)
③ New Singularity(中国)
④ Shiok Meats(シンガポール)
⑤ Revo Foods[前:Legendary Vish](オーストリア)
⑥ Finless Foods(アメリカ)
⑦ Wild Type(アメリカ)
●後編に続く
●代替の魚・シーフードとは
まず、代替の魚・シーフードとは、植物性の原材料から作る、代替の魚や、シーフードと、細胞培養の技術を用いて、本物の魚などの細胞から培養された代替品などのことである。当然ながら、天然や養殖の魚とは違い、頭、骨、血液などもない。
① Thai Union(タイ)
Thai Unionは、1977年から続くタイを拠点とする水産加工の大手である。消費者からの需要に応えるべく、今年中にプラントベースの代替エビをリリースする予定だ。グローバル・イノベーション・ディレクターのTunyawat Kasemsuwan氏は、新製品について「まるで本物のエビ天ぷらのよう」と述べている。どのような原料で作られるのか、詳細は明らかにされていない。同社は昨年、植物性のカニカマや点心など、主に外食チャネルを通じて初めて植物性の商品を市場に投入した。
同社は、冷凍エビ、冷凍マグロなどの冷凍シーフードや、缶詰シーフード、ペットフードなどの食料の製造・輸出を行う。「Chicken of the Sea」「John West」「Petit Navire」「Fisho」「Sealect」「Bellotta」などのブランドで魚とイカベースのスナックや、缶詰マグロ、ペット・フードなどを販売している。
② Avant Meats(香港)
香港初の培養タンパクの企業で培養魚を開発している。Avant Meatsは可能な限りの動物性タンパク質の中から、魚、魚の切り身、そして特に魚のあごをビジネスモデルとして選択した。魚の口というのは、基本的には大型の魚が泳ぐために使う鰾(ひょう:浮力を維持するための浮袋で、人間の肺に相当)であり、単一の細胞でできている重要な器官だそう。珍味とされているが、アジアの料理では多くの用途があるのだ。
中国市場はもちろんのこと、シンガポールやマレーシアなど中国料理の影響を受けた食文化を持つ近隣地域をターゲットにしている。
創業者であるCarrie Chan氏は2015年から長年ヴィーガンというだけでなく、活動家の側面も持ち合わせているなか、彼女はあることに気づいたという。それは、魚の消費によって起こる問題を解決するために、プラントベースを超えるものが必要だということであったという。それが、培養魚の開発へと繋がったという。中国の一人当たりの魚介類消費量は世界平均の2倍だという。消費者の需要に応えながら、海洋環境の問題を解決していくことが目的だ。
③ New Singularity(中国)
天津市に拠点を置く、菌糸体発酵を主な技術とした植物性シーフードのバイオテクノロジー企業である。菌類タンパク質で代替の水産物を開発している。シーフードのような繊維を開発することができ、キノコの菌糸や、エンドウ、食物繊維を使い、魚の身を再現するという。植物性のエビを試験的に第一世代の商品として出している。
また、今年の12月には、エビ、魚、貝類などの幅広い商品を展開していく予定だ。
他の多くの企業と同じように、世界的な乱獲を減らすことが目的だ。第一世代の製品には、植物由来のエビ、マグロ、ウナギなどがあり、初期段階では月に約12,000元(約20万円)の売上を達成している。
④ Shiok Meats(シンガポール)
Shiok Meatsはエビ、カニ、ロブスターなどの培養甲殻類を開発している。シンガポールと東南アジアでは初となる培養魚の企業である。シンガポールとマレーのスラングで「Shiok」とは、素晴らしい、美味しい、そして、単純に喜びという意味があるそうだ。同社は現在、研究開発段階にあり、2022年の事業化を目指している。
また、昨年7月には、日本の培養肉のスタートアップであるインテグリカルチャーと「エビ細胞培養肉」の研究開発を開始した。エビ培養肉を安価で大規模に製造することを目指している。
⑤ Revo Foods[旧名:Legendary Vish](オーストリア)
Revo Foodsでは、バイオ3Dプリンターを用い、植物性代替サーモンを開発している。より持続可能なシーフードの選択肢を作るために、組織工学、バイオテクノロジー、3Dプリンターのバックグラウンドを持つ、3人の博士課程の学生がオーストリアのスタートアップ「Legendary Vish」(現在のRevo Foods)として立ち上げた。
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3Dバイオプリンティングの経験を応用し、リアルなサーモンの切り身を再現している。クリーミーなスプレッドタイプのスモークサーモンも作られている。同社の代替サーモンは、きのこ・えんどう豆のタンパク質、でんぷん、藻類、柑橘類の食物繊維など11種類の原材料を用い、タンパク質、オメガ3、ビタミンB12を豊富に含んでいる。
同社の代替サーモン製品は今年の夏頃に発売される予定で、オーストリアのウィーン市内の複数のレストランと提携している。3月6日には、ウィーンでベーグルショップである「Budapest Bagel」とコラボし、代替サーモン製品の試食会を開催した。また、代替マグロの商品も計画がされているそうだが、詳細はまだ明らかになっていない。
⑥ Finless Foods(アメリカ)
Finless Foodsは、2017年にカリフォルニアを拠点に設立されたバイオテクノロジー企業で、培養魚を開発する。クロマグロ、ウニ、ウナギ、フグと同等の魚肉の生産に取り組んでいる。創業者であるMike Selden氏とBrian Wyrwas氏は、バイオ化学者かつ分子生物学者であり、細胞生物学を用いて持続可能で美味しいシーフードを世界に提供することを使命としている。
2017年には、同社の培養魚を使った初の試食会を開催している。現在は、養殖クロマグロに焦点を当てており、今年頃から培養魚の販売を開始する予定であるという。
また、宇宙での細胞培養にも取り組んでおり、魚の筋肉細胞を国際宇宙ステーションにも送った。そこでは、細胞を一定の密度まで成長させた後、バイオプリンターを使って魚の細胞を3D構造にアレンジし、細胞の小さな球体を形成することに成功したという。
⑦ Wild Type(アメリカ)
Wild Typeは、培養魚を開発するサンフランシスコを拠点とする企業であり、培養サーモンの開発を行っている。同社の目標は、「地球上で最もクリーンで持続可能な魚や肉を作る」というものだ。
同社では、塩類、糖類、脂肪、塩基性アミノ酸を含む動物性のない培養液を細胞に与えることで、細胞の培養をしている。2019年にポートランドのオリンピア・オイスターバーで開催された特別試食会で提供された同社の培養サーモンは、味も食感も天然の鮭の身に似ているということだった。野生の魚の細胞から直接育てられているため、野生のサーモンと同じ栄養成分を持っているということだ。
●後編に続く
今回は、代替魚・シーフードの開発に取り組む世界の企業を紹介した。細胞培養の技術などの最先端のテクノロジーを用いて、地球環境、人々の健康のために取り組む企業が多くあることが分かった。後編では、さらにアメリカの企業を中心に取り上げていくので、ぜひチェックしてほしい。
後編はこちらから↓
【完全保存版】代替シーフードの開発に取り組む企業をまとめてみた(後編)
参考
・Thai Union
Seafood Giant Thai Union To Launch Plant-Based Shrimp This Year
・Avant Meats
CHINA’S FIRST CULTIVATED MEAT TECHNOLOGY
・New Singularity
・Shiok Meats
シンガポールのShiok Meats社と「エビ細胞培養肉」の研究開発を開始。エビ培養肉を安価で大規模に製造することを目指す。
・Revo Foods
Legendary Vish Rebrands to Revo Foods, Plans to Host Tasting for 3D Printed Salmon Soon
バイオ3Dプリンターで植物性代替サーモンを開発するLegendary Vish
・Finless Foods
Report identifies top five cultured meat companies
Fishcakes In Space? How One Biotech Startup Is Growing Far-Out Food
魚の細胞を培養することで魚肉を作る、バイオテクノロジー企業Finless Foods社について解説
・Wild Type(アメリカ)
The Faux Fish Coming to a Restaurant Near You
The Beyond Meat of Fish Is Coming
Welcome to the world’s first cultivated seafood pilot plant