代替卵の始祖「Eat Just(イート・ジャスト)」とは一体何者なのか

 今回は、代替卵で有名な米サンフランシスコを拠点とするスタートアップ「イート・ジャスト(Eat Just)」について紹介する。イート・ジャストの商品として代替卵のボトルが代表的だが、他にはどんな商品があるのか、またどのような経緯で始まったのか、そして今後の展望などについて述べていく。

引用元:Eat Just

目次

  1. イート・ジャストの商品
  2. 企業成り立ち
  3. アメリカでの展開
  4. アジアへの進出について
  5. 拡大する販売網
  6. 今後の展望

  

1. イート・ジャストの商品

(1) JUST Egg(ジャスト・エッグ)

 イート・ジャストの定番商品だ。緑豆(リョクトウ)を主原料としており、オムレツなどを調理する際に便利なボトルに入った液状のものと、焼いたパンやバーガーに挟むのに便利であろう、焼いて折りたたまれた冷凍のシート状のものの二種類がある。もちろん卵は不使用、遺伝子組み換えでなく、コレステロールフリー、乳製品不使用でありながら、タンパク質も含まれている。

液状タイプ(左)とシートタイプ(右)
(引用元:Eat Just)

     

(2) JUST Mayo(ジャスト・マヨ)

 こちらの商品も卵不使用、グルテンフリー、大豆不使用、人工調味料・人工保存料不使用の代替マヨネーズである。同社の前身であるHampton Creek(ハンプトン・クリーク)の時代から作られている。サラダのドレッシングとしても、他の調理にも幅広く使うことができる。

引用元:Eat Just

   

2. 企業成り立ち

 イート・ジャストは2011年にハンプトンクリークという社名で社会起業家のジョシュ・テトリックと米国人道協会(The Humane Society of the United States)のジョシュ・バルクによって設立された。彼らが、会社を始めたきっかけは、大きな変化を早く起こすためで、より健康的で手頃な価格の食品を作ることが目的だ。(同社代表、ジョシュ・テトリック氏のTed Talksでのスピーチはこちらから視聴可能)。ジョシュ・バルク氏によれば、小さな檻に動物を詰め込むのは、時代遅れのシステムだという。グーグルは世界のウェブページをインデックス化しているが、彼らは世界の植物にも同じことをしているという風に述べる。

テトリック氏は、サンフランシスコで開催された会議でのプレゼンテーションの中で、「私は今知っていることの多くを知らなかった」と述べ、「確かに分かっていたのは、健康的に食べることは基本的な権利であるということだ」と話したそうだ。

初期の製品としては、植物をベースにしたジャストマヨやジャストクッキー生地などがある。2013年には最初の製品として、カナダ産のイエローエンドウ豆やソルガムきびなどの原材料を使用し、卵に代わる持続可能で機能的な安価な代替品としてBeyond Eggs(ビヨンドエッグ)を提供していた。 2番目の製品として、前にも紹介したジャスト・マヨが約7ヶ月後に発売されている。

しかし、その後、売上を伸ばすために自社製品を購入したと非難されるなど訴訟に巻き込まれ、また、取締役会の一部が交代し、国際ビジネス、農業、持続可能性の経験を兼ね備えた個人で構成された。

ハンプトンクリークはそれ以来、ジャスト社として改め直し、以前提供していた野心的な商品をほんの一部のラインナップに縮小した。それらが、ジャストエッグやジャストマヨであり、ジャストエッグは、特に同社の代表的な商品といえる。

   

3. アメリカでの展開

2020年9月には、販売網を大幅に拡大すると発表し、「ジャスト・エッグ(JUST Egg)」1万7000店を超える全米各地の店頭に並んでいる。その新たな販売網には、ウォルマートのほか、スーパーマーケットのジャイアント、クローガー、アルバートソンズ、セーフウェイなどが含まれているそうだ。

また、アリゾナ州、カリフォルニア州、コロラド州、ワシントン州の小売店では、調理済みでシート状の冷凍のジャスト・エッグも販売されているそうだ。

    

4. アジアへの進出について

(詳しくは10月26日のニュース記事へhttps://nextmeats.jp/2020/10/26/eatjustandimpossible/)

さらに、アメリカ国内だけでなく、アジアへの進出も話題に取り上げられた。食品投資ファンドProterra Investment Partners Asiaと提携を組み、シンガポールにアジア初の生産施設を建設することが発表された。そして、2021年11月2日には、世界で初めてシンガポール当局がその培養鶏肉の販売許可を出した。今後、近いうちにシンガポール内のレストランでナゲット状で提供される予定であるという。

    

5. 拡大する販売網

また、今年の3月には、カタール政府系ファンドであるカタール投資庁の主導によって、2億ドルの資金調達に成功している。

そして、その販売網はアメリカだけでなく、カナダでも全国的に広がっている。中国では、ファストフードチェーンの「Dicos」でも販売されている。

さらに、今年10月には、JUST Eggの主原料である緑豆が欧州食品安全機関(European Food Safety Authority: EFSA)の栄養に関する専門家たちによって認められた。これにより、Eat Justが2022年半ばのヨーロッパでの販売開始へと一歩近づいたことになった。

   

6. 今後の展望

-商品展開

・培養和牛肉の開発の取組

代替卵が有名なジャスト・イートであるが、今後は、培養肉の開発にも取り組んでいくという。現在、日本の鳥山牧場(群馬県渋川市)と連携し、培養和牛の開発にも取り組んでいる。細胞農法の専門知識と世代の熟練した技術を組み合わせることによって、世界中のより多くの人々に和牛文化を広めることができると考えている。

代替卵だけでなく、培養肉にも着手しており、さらに日本の和牛農家との連携により、将来的には日本国内での培養肉の流通も予想される。新たな取り組みを行うイート・ジャストに今後も期待が高まる。

  

参考サイト:

Eat Just

https://www.ju.st/en-us/products/consumer/egg

Food Business News

https://www.foodbusinessnews.net/articles/11575-what-happened-to-hampton-creek

Forbes Japan

https://forbesjapan.com/articles/detail/36910

TechCrunch

https://tcrn.ch/34vh5tn

Green Queen

https://www.greenqueen.com.hk/eat-just-vegan-egg-europe/