ヴィーガンチーズの市場予測 2025年には4,800億円規模にまで成長する見込みも

 アイルランドのダブリンに本社を構える調査会社「Research and Markets」により、「ヴィーガン チーズ マーケット予測 2020-2025年」(”Vegan Cheese Market – Forecasts from 2020 to 2025″)の報告書が先月公開された。  

 報告書によると、世界のヴィーガンチーズ市場は、年平均8.91%の成長率で推移していくとみられ、2025年には市場全体が2019年の約2,900億円から約4,800億円規模に上ると予測されている。ヴィーガンチーズは植物性チーズという名称でも販売され、主に乳糖不耐症の人たちやプラントベースの食生活を送る人たちをターゲットに売られている。 

 
 また最近では、消費者の中での健康志向の高まりや健康に配慮した食事制限、ヴィーガニズムの人気の高まりなどから、世界的にヴィーガンチーズ商品の需要が伸び続けている。加えて、世界各地で広がるヴィーガン人口の急増から、ヴィーガンチーズのさらなるマーケットへの浸透が次の5年で予想される。
 ただ、いまだ動物性のチーズ製品よりも価格帯が高く設定されていることから、ヴィーガンチーズ市場の成長は価格面で制限される可能性もある。
     

高まる消費者意識

 動物肉製品の消費による地球環境への負担が認知され続けていることから、近年ではヴィーガンチーズを含む、プラントベース食品の人気が高まっている。放牧が温室効果ガスの排出に大きく貢献していることが世間に知れ渡るほど、世界中でプラントベース食品への注目の高まり、同時にヴィーガンチーズ市場の拡大は進んでいく。

 また、急速に進んでいるヴィーガン食の浸透も、他のプラントベース食品とともにヴィーガンチーズの需要の伸びを世界各国で促している。加えて、人工甘味料や化学添加物が使用されていないことも、生産者や消費者がプラントベース食品を好む要因になっている。

シーズ 完熟チェダーのヴィーガンチーズ
(引用元:Sheese

乳糖不耐症人口の増大とヴィーガンチーズ市場の拡大

 近年、特にアメリカ、イギリス、ドイツなどの先進国において、乳糖不耐症を持つ人口の増加に伴い、ヴィーガンチーズが著しい需要の高まりを見せている。これに追い打ちをかけるように、社会的、倫理的観点から動物性食品に対する懸念が高まり続けていて、植物性チーズのさらなる需要の伸びが次の5年間でも見込まれている。
 さらに、主要な市場関係者が植物性乳製品の研究開発への投資に力を入れ始めているため、今後新規参入する植物性乳製品企業に十分な成長の機会が与えられている。

 またコロナウイルスの影響を受け、多くの消費者がプラントベース食品をより求めるようになってきている。ヴィーガンチーズ製品も、他のプラントベース食品と同じ軌道をたどり、世界各地でより需要が膨らむと予想される。
   

 2020年の上半期、アメリカやカナダなどの先進国では、植物性チーズの小売売上が指数関数的な著しい成長を記録した。近年の植物性チーズ生産に対する投資の拡大も、世界各国のヴィーガンチーズ市場の拡大に寄与している。

ミヨコズ・クリーマリーのビーガン クリームチーズ
(引用元:Miyoko’s Creamery

欧州マーケットの動向

 プラントベースの食生活が特にドイツで人気を博しており、多くの人々が動物性タンパク質中心の食生活から遠のいている。消費者の間での健康志向の高まりに加え、プラントベース食品関係の企業に対する投資の増加から、ドイツの米タンパク質マーケットの拡大が次の5年間で予測される。

 同時に、続々と開発されるプラントベース食品によって生み出されている幅広い選択肢と、サステイナビリティに配慮する風潮からも、同国の米タンパク質市場の動向が注視されている。

ヴィーガンズのカシュ―バート(カシューナッツのカマンベールチーズ)
(引用元:veganz

激化する競争

 ヴィーガンチーズ市場全体は、目まぐるしいほどに拡大し続けている。世界中で広まる健康面を重視したライフスタイルに応えるように、市場の新規参入者には次々と成長の機会が与えられている。

 それと同時に、増え続ける他業界での応用も世界中のヴィーガンチーズ生産者にさらなる伸びしろを与えている。それらに加え、新商品の急増、主立った市場関係者による投資の拡大、マーケティングによる需要の高まり、地域インフラの改善など、その他様々な市場要因によっても、ヴィーガンチーズのバリューチェーン全体が向上し続けるとみられている。
      

 また、各企業も小売販売に直接かつ積極的に取り組み、並行してEコマースに資金を投じることで、成長し続けるマーケットから利益を生み出そうと奔走している。消費者側も、購買傾向に近年変化が見られ、ネット小売り割引などの特典に惹かれ、ネット小売を選ぶ消費者が増えている。

 現時点での、世界のヴィーガンチーズ市場における主なマーケット・プレーヤーは、

  • ホープ・フーズ(Hope Foods, LLC / 米)
  • グッド・プラネット・フーズ(GOOD PLANeT Foods / 米)
  • カイト・ヒル(Kite Hill / 米)
  • エンジェル・フード(Angel Food / ニュージーランド)
  • ミヨコズ・クリーマリー(Miyoko’s Creamery / 米)
  • グリーン・ヴィエ・フーズ(Green Vie Foods / キプロス)
  • トーフッティ・ブランド(Tofutti Brands, Inc / 米)
  • ビュート・アイランド・フーズ(Bute Island Foods Ltd / 英)
  • ダイヤ・フーズ(Daiya Foods, Inc / カナダ)
  • ウェイフェア・フーズ(Wayfare Foods / 米)
  • ガーデナー・チーズ・カンパニー(Gardener Cheese Company / 米)
  • ビオライフ(VioLife Foods / ギリシア)
  • ギャラクシー・ニュートリショナル・フーズ(Galaxy Nutritional Foods, Inc / 米)

である。

 ヴィーガンチーズ市場に関わる主な企業はまだまだ数が限られているが、今後世界で拡大し続ける需要に応えるように、収益をますます上げていくことだろう。


ダイヤのチェダー・シュレッド
(引用元:daiya


報告書全文は、Vegan Cheese Market – Forecasts from 2020 to 2025

参考サイト:https://www.globenewswire.com/news-release/2020/12/04/2139696/0/en/Insights-on-the-Vegan-Cheese-Global-Market-to-2025-by-Source-Product-Type-Distribution-Channel-and-Geography.html