シンガポールは代替肉のハブ(中心)となるか

 シンガポールでは昨年、プラントベース食品が続々と発売され、その中でも人気の高い代替肉分野にスポットライトが当てられ大盛況であった。

 新型コロナウイルスの影響によりプラントベース食品業界の成長が加速した、と業界関係者は話す。人々が食糧安全保障への関心を高め、持続可能性、環境、倫理、健康などの理由から、より社会的な意識を持つようになったためだ。
                

 昨年は、カリフォルニアのベンチャー企業イート・ジャスト(Eat Just)の培養鶏肉「グッド・ミート(Good Meat)」、オランダのプラントベースのブランドである「ザ・ベジタリアン・ブッチャー(The Vegetarian Butcher)」、ポピア(シンガポール風生春巻き)の皮や冷凍食品のメーカーとして知られるTee Yih Jia Food Manufacturingの代替食品ブランド「ALTN」など、さまざまなブランドが登場した。

 ALTNは、2年前から製造を開始し、菌類、エンドウ豆、大豆などの代替たんぱく質を使用した冷凍・調理済みの食品やスナックを提供している。
                       

“ALTN” Meat-free Spicy Nugget
(引用元:Saladplate

 シンガポールが代替肉のハブ(中心)になろうとしていることから、今年も肉の代替品が続々と登場することが予想される。
                  

 今年1月にシンガポール最大のショッピングモールであるビボシティ(VivoCity)に、コンセプトショップとカフェ「グリーンコモン」をオープンした、香港のプラントベースのライフスタイルプラットフォームである「グリーンマンデー」への注目が高まっている。270㎡以上の広さを誇るこのプラントベースのワンストップショップでは、ビヨンドミート(Beyond Meat)、Heura、Alpha Foodsなど、さまざまなブランドが揃う。

 オムニフーズ(Omni Foods)の生みの親として知られるグリーンマンデーは最近、ランチョンミートのオムニミートと豚肉のようなオムニミートストリップ(細切り)を、厳選されたレストランとシンガポール国内最大のチェーン店である「フェアプライス(FairPrice)」というスーパーマーケットで発売した。

 さらに、フードテック企業のNext Genは3月にプラントベースのチキンを発売予定だ。同ブランドは、昨年10月に研究開発センターと本社をシンガポールに移している。

 その他の地元企業としては、フロートフーズ(Float Foods)が今年後半にプラントベースのエッグパティと千切り卵(炒め物やチャーハンに最適)を発売する。「OnlyEg」と呼ばれるプラントベースの代替卵(全卵)は豆類で作られており、来年22年の第一四半期に発売される予定である。

引用元:Float Foods

              

 島の反対側にある別の研究室では、科学技術研究庁からスピンアウトした「Ants Innovate」が細胞培養技術を使って豚のブロック肉の製造に取り組んでいる。ひき肉の域を超えた培養肉スナックやカツレツは、今年後半に発売予定とのことだ。
 また今後数年以内には、ステーキや豚バラ肉の製造も視野に入れているという。
                      

 そしてこれこそが、現地でレストランなどを展開するプリヴェ・グループ(The Prive Group)の会長ユアン・オエイジ氏が予測するトレンドである。すなわち、ひき肉やナゲットなどの選択肢を超えた、より本物に近いステーキなどの肉片のような製品の台頭だ。

 オエイジ氏は自分のレストランに協力してくれるブランドを常に探しており、代替シーフードの選択肢が今よりもっと市場に出てくることを願っている。彼が注目しているのは、使用されている成分や添加物が少ない「クリーン」な製品を提供しているプラントベースのブランドだ。

 認知度を高めるために、彼は仲間の飲食店経営者と協力して、より多くのプラントベースのメニューを提供したり、市場を試すために一品料理を提供したりすることにも積極的に取り組んでいる。

 「多様な味覚を持つ人たちに対応できる場所が足りていない。人々はグループで食事をするので、メニューの種類を増やせば、より多くの人を惹きつけることができるだろう」とオエイジ氏は述べている。
     

参考
Worth Watching in 2021: Plant-based boom sets stage for S’pore to become alternative meats hub