米インポッシブル・フーズはアメリカの食料品店での希望小売価格を20%下げ、その価格は肉類と同等の価格に近づきつつある。

【ポイント】
●インポッシブル・フーズ(Impossible Foods)は食料品店の希望小売価格を20％引き下げる。
●同社は牛肉との価格差を縮めようとしているが、牛肉は未だインポッシブル・フーズの代替肉の半分以下の価格で販売されている。
●コロナウイルスの流行に伴う消費者行動の変化により、同社の製品を取り扱う小売店の数は昨年に比べて113倍増加している。
　　　　　

　インポッシブル・バーガーの希望小売価格はパテが5.49ドル（約570円）、12オンス（340g）のパッケージが6.99ドル（約736円）になる。ウォルマートやクローガ―などの食料品店約17,000店舗が対象だ。またカナダやシンガポール、香港のスーパーでも、同様の値下げを行なうようだ。

　米国農務省が発表した週の全国牛肉小売価格の報告書によれば、この値下げによりインポッシブルの代替肉はこれまで以上に安くなったが、それでもなお、インポッシブルバーガーの価格は食肉と比較すると2倍以上だという。
　　　　

　ただインポッシブル・フーズは、最終的には牛ひき肉の価格を下回ることを目標としている。
　非上場のスタートアップ企業が小売価格を引き下げたのは今回が初めてだが、同社が継続的に商品を値下げするのはこの1年で3回目である。飲食店の流通業者に対して2020年と今年の1月に値下げをしている。
　　　　　　　　　

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

アメリカでの急激な代替肉需要の高まり

　インポッシブル・フーズの代替肉製品を扱うスーパーの数は、この1年で113倍に増えた。コストコでも47カ所で試験的に販売され、その結果さらに多くの店舗で同社の製品が並ぶことになるかもしれない。

　新型コロナウイルスの大流行により、より多くの消費者が食料品店へ食料を求めるようになったこと、そして食肉加工場での新型コロナウイルスの発生が肉製品の不足をもたらしたこともあり、代替肉への関心が高まったと言える。

　「昨年、新型ウイルスが訪れるまでは、小売店でこれほど早く動き出すつもりはなかった。」とインポッシブル・フーズ社長のデニス・ウッドサイド氏は述べている。　

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　インポッシブル・フーズの生産能力は2019年から6倍に拡大し、これにより新たな需要をすべて取り込むことができている。ウッドサイド氏は、生産ラインをより頻繁に稼働させ、より多くのシフトをスケジュールに加えることで、同社の製造がより効率的になったと語った。また、インポッシブル・フーズが成長するにつれ、仕入れ先も成長しているともコメントしており、「彼らは節約した分を我々に還元してくれている。」とのことだ。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

代替肉業界の熾烈な競争

　ライバルであるビヨンドミート社も競争が激しくなってきたため、価格を下げようとしている。昨年の夏には、ミートレスバーガーパテの冷凍お徳用パックの販売を開始。10パックでの小売価格は15.99ドル（約1685円）、ないし1ポンドあたり6.40ドル（約674円）であった。これにより同社の株式は昨年50％上昇し、市場価値は104億ドル（約１兆円）に到達した。

　インポッシブル・フーズとビヨンドミートは、本物の肉にそっくりな代替肉を販売する他の企業との競争に直面していることに加えて、まもなく培養肉を作るメーカーからの価格圧力に直面する可能性がある。イスラエルに拠点を置くフューチャーミート・テクノロジーズ社は今月1日、培養鶏胸肉の製造コストを7.5ドル（約750円）に引き下げたと発表した。

　今のところ、昨年12月に米イート・ジャスト(Eat Just)に許可を与えたシンガポールが、培養肉の販売を承認した唯一の国である。

　「結局のところ我々が競い合っているのは、現在の動物性タンパク質産業である1兆ポンド（約4,536 kg）にも及ぶ産業なのです。」とウッドサイド氏は述べている。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

参考
Impossible Foods lowers grocery store prices amid pandemic-fueled retail expansion

Impossible Foods cuts grocery store prices 20%, to ‘compete with the cow’: president

Impossible Foods cuts faux meat prices by 20% at grocery stores