【日本の代替肉(フェイクミート)事情】国内メーカーをウォッチ
|最新更新日:2021年2月1日
アメリカでは「ビヨンド・ミート」や「インポッシブル・フーズ」など、代替肉(フェイクミート)ベンチャーが大きく成長しており、これらに次ぐ企業もたくさん出てきている。日本はどのような状況にあるのか。
日本でも代替肉については、植物肉やフェイクミートとも呼ばれており、大手やベンチャーが取り組み始めている。
それでは日本で代替肉製品を手に入れられるのだろうか。ネットで調べてみると“大豆ミート”と呼ばれるものはたくさん販売されていたり、今ではスーパーでも簡単に見つけることができる。(詳しくはこちらの記事を参照)
しかし、「ビヨンド・ミート」や「インポッシブル・フーズ」の製品は肉として販売されているものであり、豆腐ハンバーグや今販売されている多くの「大豆ミート」なるものとは一線を画したものだ。アメリカで販売されているものと同等の代替肉製品は、現在国内で手に入れることは難しい。
欧米、特にアメリカでは、スーパーの他にハンバーガーショップのようなファーストフード店でも数多く販売されている。昨年には日本でもモスバーガーやドトール、そしてあのバーガーキングでも代替肉を使った商品が販売され注目を浴びた。これからの動きにも期待が高まる。
日本の代替肉(フェイクミート)ベンチャー
日本の代替肉ベンチャーはどれくらいあるのだろうか。まとめてみよう。
・ネクストミーツ株式会社(東京)
代替肉によって過剰な畜産を減らすことで気候変動の問題を解決すべく、2020年6月に立ち上がった代替肉スタートアップ。「地球を終わらせない」というキャッチピーのもと、世界初の焼肉用代替肉「ネクスト焼肉」や、「ネクスト牛丼」などのプロダクトをリリース。最先端テクノロジーを駆使した素材作りの研究も行う。
総合商社の豊田通商と提携して日本での普及に取り組みながらも、肉の代替を世界中で進めるべくベトナムと台湾での生産をスタートした。ここからアメリカや中国はもちろん、香港、シンガポールなど東南アジア地域、そしてヨーロッパでも展開していく予定だ。
・DAIZ(熊本)
大豆由来の植物肉原料を開発・製造するDAIZ株式会社(本社:熊本県)。自社商品を作り消費者に届けるのではなく、あくまでも自社開発の原料を外食チェーンなどに卸すB to Bの形だ。DAIZが開発・製造する独自の原料「ミラクルミート」は、一般的な脱脂大豆ではなく発芽大豆(丸大豆)由来の植物肉という特徴があり、大豆臭さがないと評判だ。
昨年は、冷凍食品大手の株式会社ニチレイフーズ(本社:東京都)との資本業務提携から始まり、兼松グループや丸紅、そして大手食品メーカーの味の素との提携で注目を浴びた。
・グリーンカルチャー株式会社(埼玉)
植物肉などの販売や製造開発を行う企業。一昨年に、福島県の古殿町と街の名産である大豆を利用したミートボールを発表した。現在グリーンカルチャーが作るチキンナゲットとミートボールは手に入れることが可能。
昨年秋ごろに数量限定で販売した植物肉の生パティは、業界では話題になった。
・インテグリカルチャー株式会社(東京)
2015年創業のスタートアップ。代替肉(フェイクミート)ではなく培養肉(クリーンミート)の研究開発を行っており、環境保護という視点が大きい。2019年7月には、日本ハム株式会社と共同で、基盤技術開発を始めると発表している。
今年の年末には人工フォアグラをレストランや食品会社に販売することを目指しているとのことだ。
・ベジタリアンブッチャージャパン
オランダ発のプラントベースミート企業が日本に上陸。専売契約を結んだ日本企業が日本ベジタリアンブッチャージャパンとして設立。池袋にレストランを構え、そこでハンバーガーなどの商品を食べることができるほか、家庭用の植物肉製品を買うこともできる。フェイクミートの販売の他にもフードロス事業なども行う。
代替肉開発に取り組む大手企業
①大手味噌メーカーのマルコメは2015年どこよりも早く、より手軽に使える食材としてレトルトタイプの代替肉製品「大豆のお肉」シリーズを開発。動物性原料や化学調味料を一切使わない製品開発を行っている。おそらくスーパーで最もよく見かける製品だろう。
②日本ハムは、昨年3月から肉を使わない代替肉のハンバーグやミートボール、ハムを「NatuMeat(ナチュミート)」というブランドで販売している。(現在スーパーであまり見かけないことから、もしかしたら生産をストップしているかもしれない)
③同じく大手食肉加工メーカーの伊藤ハムも負けじと、昨年3月から「まるでお肉!」シリーズを展開している。他企業が出していないようなメンチカツやハムカツタイプの商品などユニークな商品も販売しており、現在は7品を展開中。こちらもスーパーでよく見かける商品だ。
④森永製菓の社内ベンチャーとしてスタートした、SEE THE SUNでは、2019年8月26日、玄米入り大豆ミートの「ZEN MEAT(ゼンミート)」とレトルトシリーズを大幅リニューアルさせている。
⑤大塚食品が2018年11月にテスト販売を始めて、2019年6月にリニューアル&発売をした「ZEROMEAT(ゼロミート)」は、食感・味・香りを肉に近づけた代替肉製品となっている。
⑥大手お菓子メーカーの亀田製菓のグループ会社「マイセン」も独自の代替肉製品を展開している。大豆と玄米だけでつくったお肉のような食感の大豆食品、その名も「ベジミート」。
筆者も何度か口にしたことがあるが、他の商品にはない食感と大豆臭さを感じないのが大きな特徴だ。現在はフィレタイプとミンチタイプの2種類を展開している。(どちらも乾燥タイプ)
⑦一般消費者にはあまり知られていないが、世界に先駆けて代替肉の開発・製造に取り組んできたのが不二製油。不二製油は1950年創業の老舗企業で植物性油脂の事業が中心だが、1957年から60年以上にもわたり、食品素材としての大豆の可能性を追求してきた。現在では粒状大豆たんぱく供給の国内大手で、大豆たんぱく素材の国内市場でのシェアは約5割にも上る。
⑧食品卸行の大手企業である日本アクセスは、大豆原料の冷凍ハンバーグとソーセージを開発し、ファストフードなどの外食市場への提案を始めており、ECや食品スーパーデリカ・市販用への展開も順次計画している。3月から4月にかけて順次発売される予定だ。
また今年の3月には、プリマハムがマルコメが提供する脱脂大豆を用いて、代替肉製品の販売をスタートする。「トライベジ」と名付けられたそのシリーズは、家庭向けのハンバーグやミートボール、フライドチキン、メンチの計4品のラインナップだ。
今後の代替肉(フェイクミート)市場
このように、大手企業による「大豆ミート」と言われる植物由来の“もどき肉”のようなものが国内にたくさん出回っているのが現状である。しかし、スーパーの肉コーナーに置かれるような代替肉製品は、日本の市場ではまだこれからというところだ。
大手が出している製品は比較的簡単に手に入り、ネットなどからも購入できるのが現状である。またグリーンカルチャーのサイトを見ると、様々な飲食店に出しているのが分かる。
日本では精進料理が出来た時から考えると、植物性食品の歴史は長い。大豆ミートなどの肉の代用品としてのもどき肉はたくさん出ていたが、昨年あたりから、食感や見た目など、肉に近づけた代替肉が少しづつ話題となっており、大豆ミートなどに付きまとっていた、味などに対するマイナスイメージをどう払拭できるかが、今後の大きな課題となるだろう。
代替肉の記事に対するコメントなどを見ても、訳の分からない化合物の組み合わせは不安、健康に問題あがあるのではないか、といった書き込みも見られる。食品添加物などに敏感な日本の食文化は大きな壁かもしれない。
代替肉が化合物というものよりは、環境保護に対してのメリットや、WHOでも提言されている肉の発がん性に対する健康面でのアピールが必要となるだろう。そもそも現在スーパーで販売されている安価な畜肉の多くに、ホルモン剤や抗生物質などの極めて科学的な物質が投与されていることすら、あまり知られていないように思う。
また、ベジタリアンやヴィーガンといった文化・価値観が根付いていないところも、日本の代替肉市場が世界に比べて遅れをとっている要因の一つではないだろうか。ベジタリアンやヴィーガンが肉や動物性の食品を食べない理由、そしてこの代替肉が現在世界中で急速に広まっている様々な背景など、正確な情報を伝えることが必要なのかもしれない。
2021年 国内の代替肉市場で注目したい点
筆者が個人的に気になっていることは3点。
①今年、スーパーの精肉売り場にこの代替肉製品が並ぶ日が来るのか、②原料メーカーのDAIZは自社商品の販売に乗り出すか、また海外での展開はどう進んでいくのか、③今年、市場全体でどのような新しい商品が出てくるのか、また大豆メインの商品が多い中で異なる代替タンパクを用いた商品が出てくるのか、だ。来年の今ごろ(22年2月)にはまた、業界図も大きく変わっていることだろう。