イスラエルのPlantish社が世界初のヴィーガン・サーモン・フィレを発表

イスラエルに本社を置くスタートアップ「Plantish(プランティッシュ)」は、500億ドル(約5兆6千億円)規模のサーモン産業に挑戦し、魚を一匹も傷つけずに同じ味、食感、栄養を提供する世界初のホールカット・ヴィーガン・フィレを発表した。本記事では、Plantishのサーモン・フィレと、その他の代替魚を開発する企業をご紹介する。

 Plantishが開発したサーモン・フィレ「Plantish Salmon」は、フレーク状の食感、バターのような口当たり、繊維状の構造など、あらゆる点で魚を模倣して作られており、魚を一切を使用せずに食体験を完全に再現することができる。さらに、魚の栄養価に合わせ、タンパク質、オメガ3系、オメガ6系、ビタミンB群を豊富に含んでいる。

引用元:Plantish

 Plantishによると、魚のほとんど(80%)はフィレを丸ごとカットして消費されている。しかしほとんどの代替シーフード製品が魚のすり身を模して作られている。この市場のギャップに対処するため、Plantishは独自の植物性タンパク質の配合と特許出願中の技術を使用し、煮る、焼くなど、従来のサーモンと同じ方法で調理できるホールカットのフィレを作った。

 Plantishの共同設立者兼CEOのOfek Ronは、「私たちは、より持続可能で、より栄養価が高く、よりおいしい魚の選択肢を提供することで、海を守り、海洋動物を消費する必要性をなくすために存在している。私たちのビジョンは、魚を一匹も傷つけることなく、世界をリードするシーフードブランドになることだ。」と述べている。

 Plantishは、200万ドル(約2億2千万円)のシード資金調達を行ったばかりである。この資金をもとに、ホールカットサーモンの生産規模を拡大し、レストランで魚の代替品として手頃で実行可能なものにする予定だ。創業6カ月のこのスタートアップは、年内に一部のポップアップでリアルなサーモンを展示する予定で、2024年までに広く発売することを目標としている。

    

魚を使わないフィレオフィッシュが海を救う

 なぜ代替魚が開発されるのか。工業的な漁業は、深刻な環境破壊の原因となっている。海から引き揚げられた魚は、人間による汚染によってマイクロプラスチックをますます多く含むようになっている。 

 そのような背景から、現在、Plantishのように5860億ドル(約66兆円)の規模を持つ世界の魚産業に取り組むスタートアップが増えてきている。500億ドル(約5兆6千億円)規模のサーモン産業に挑戦する植物由来の企業として、Good Catch Foods(グット・キャッチ・フーズ)も挙げられる。今週、同社は初の植物由来のサーモン製品を発売した。6種類の植物性タンパク質(エンドウ豆、大豆、ヒヨコ豆、ソラマメ、レンズ豆、ネイビー豆)をブレンドしたバーガーを作ったのである。ヴィーガン用のパウチ入りツナやシーフードの前菜・メインディッシュも製造している同ブランドは、米国で最も消費されている魚であるサーモンの代替品として、魚を使わない新しいバーガーを開発したのである。

引用元:Good Catch Foods

 香港では、植物性豚肉製品で有名なOmniFoods(オムニフーズ)が、昨年オムニシーフードを発売したばかりだ。同ブランドはまず、ツナ缶、パン粉をつけた魚、フィレの代替品に取り組んでおり、近い将来、OmniSalmonのリリースを目指している。

    

犠牲を伴わないシーフード 

 海を守るためのもう一つの解決策は、細胞養殖だ。これは、少量の細胞を使って研究室内で本物の魚肉を育てる方法である。この分野では、いくつかのスタートアップが前進を遂げている。カリフォルニアに拠点を置くWildtype(ワイルドタイプ)社のパイロットプラントは最近稼働し、魚を一匹も屠殺することなく、細胞養殖によって年間約5万ポンド(約2万キログラム)の魚肉を生産する能力を目前にしている。生産能力が上がると、年間20万ポンド(約9万キログラム)以上の屠殺不要の魚介類を生産することができる見込みだ。

 米国では、この方法で製造された食肉の規制認可はまだ申請中だが、Wildtype社はすでに、パイロットプラントに隣接する世界初の寿司バーで、寿司用サーモンを紹介することを検討している。規制当局の認可が下りれば、全米規模のシーフード・チェーン店Pokeworks(ポークワークス)がWildtype社の養殖魚をメニューに加えることになっている。

引用元:Wildtype

 サンディエゴでは、スタートアップのBlueNalu(ブルーナル)が、海を介さずに養殖魚を市場に出すという同様のミッションに取り組んでいる。この企業は最近、商業化のために6,000万ドル(約70億円)の資金を調達した。この資金には、マヒマヒと高級クロマグロを生産する38,000平方フィート(約3500平方メートル)の施設の建設費用が含まれており、規制当局の承認を待ってフードサービスのパートナーと試験を行う予定である。

 シンガポールは、GOOD Meat(カリフォルニア州に本社を置くEat Justの子会社)が製造したチキンナゲットを2020年に販売することを認め、現在世界で唯一、養殖肉に対する規制上の承認を得ている国である。シンガポールでは細胞養殖の分野でイノベーションが爆発的に増えており、Shiok Meats(カニ、ロブスターなどの甲殻類に取り組んでいる)などがその先頭を走っている。

 Plantishのサーモン・フィレのように、代替魚がより私たちの食生活になじむ形になってきている。環境汚染を防ぐために魚を食べないという選択をする際、食生活をほとんど変えずに美味しい代替魚が食べられれば、ストレスなく環境負荷を軽減できるだろう。

参考サイト

https://vegnews.com/2022/1/plantish-flaky-vegan-salmon-filet

https://theworldnews.net/il-news/faux-fish-israeli-startup-unveils-3d-printed-plant-based-salmon-fillet

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