三菱商事がアレフ・ファームズと提携 -培養和牛ステーキを日本の食卓に

 イスラエルの培養肉ベンチャー、アレフ・ファームズ(Aleph Farms)が、三菱商事の食品部門とMoU(基本合意書)を締結したと発表した。両社は日本の食卓に培養肉の技術を一早く取り入れることを目標としている。

 アレフ・ファームズは、独自に開発し大量生産にも対応可能なBioFarm™の技術を駆使し、動物性のものに劣らないステーキ肉を培養生産したいとしている。同社で既に開発が進んでいる牛の培養肉を、日本の消費者の舌に合わせてアレンジしていくとのことだ。一方の三菱商事は、自社のバイオテクノロジー技術、ブランドが担保された食品生産技術、そして日本国内での流通網を生かしていく方針だ。
  

「三菱商事とのMoU締結は、弊社事業の海外展開においても重要な一歩となる。世界の市場を開拓していく上で、三菱商事のようなビジネスパートナーはとても貴重な存在だ。」とアレフ・ファームズの創業者兼CEOのトゥービア・ディディアー(DIdier Toubia)氏は話す。 

アレフ・ファームズ 培養牛肉のステーキ
(引用元:Aleph Farms)

 三菱商事は国際的な総合商社で、1,700余りのグループ会社を世界のおよそ90ヵ国で展開している。およそ10の事業グループで構成され、ほぼ全ての業種を一手に網羅しながら年間約14.5兆円規模の収益を生み出している。
 同社の食品グループは、食品の原材料や生鮮食品から加工食品まで幅広く手がけていて、原材料の調達から完成品の製造工程まで、食のサプライチェーンにおける各過程に積極的に関わっている。

 「食品および食肉産業と連携し、培養肉という存在を私たちの食料システムに上手く浸透させることで社会に貢献していきたいというアレフ・ファームズの思いが、今回の業務提携には強く反映されている。」とトゥービア氏は言う。また続けて、「培養肉を日本市場に届けることができることをとても嬉しく思っている。」と同氏は述べている。

アレフ・ファームズ(Aleph Farms)専属シェフ アミア・イラン(Amir Ilan)氏
(引用元:medium

 アレフ・ファームズは昨年春、2025年までに食肉生産による温室効果ガスの排出をなくし、2030年までにはサプライチェーン全体での温室効果ガスの排出をなくしたい、と発表している。現代社会の食生活スタイルには、まだまだ食肉の存在が欠かせない。そんな中、各国の食肉産業では、安定的に栄養と品質の保たれた食肉を提供することにも問題を抱えている。今回の共同事業は、そういった食肉生産システムが持つ既存の問題にも、現実的かつ効果的な解決策を提示している。

 「これは、私たちがアジア太平洋地域、北南米地域、ヨーロッパ地域で展開している、『BioFarm to Fork』戦略的パートナーシップネットワークの取り組みの一環でもある。この取り組みは、カーギル(Cargill)やスイスのミグロスグループ(Migros Group)から一昨年度に受けた、ラウンドAの戦略的投資にもつながっている。」とアレフ・ファームズのマーケット開発担当のブレナー・ゲーリー(Gary Brenner)氏は話す。
   

 また三菱商事とアレフ・ファームズは、「細胞農業勉強会(Cellular Agriculture Study Group)」の一員でもある。細胞農業勉強会は、ルール形成戦略研究所のもとで政策提言の立案などを行っているコンソーシアムだ。勉強会では、多岐に渡る専門分野から集まる知見をベースに、細胞農業で生産される食品の定義や製造方法などについて日々議論が交わされている。

 加えて同勉強会では、日本の細胞培養食品が世界競争に臨み、既存の細胞培養の業界で生き残れるよう、製品や生産技術の差別化についても研究している。

アレフ・ファームズ 培養牛肉の焼肉
(引用元:Aleph Farms)

 三菱商事の食品売り上げは昨年度、約1,600億円に上った。代替肉事業に投資しているブルー・ホライゾン(Blue Horizon Corp.)によれば、培養肉市場は次の10年で約14.5兆円($1400億)規模にまで拡大するとされている。

 培養肉の流通までには、法整備の観点でも難点がある。しかし、昨年末にはシンガポールで、世界初となる培養肉の販売許可が国から下りたとの発表があり話題となった。
 また、アレフ・ファームズの拠点があるイスラエルでも、ネタ二ヤフ首相が培養肉業界に対してとても肯定的な立場をとっているという。先月には首相自身がアレフ・ファームズの工場に足を運び、培養牛肉のステーキを自ら試食したそうだ。これから先、世界的に人口が増加していく中で食肉を供給していくのがより困難になっていくことを考慮しても、培養肉の流通は想像よりも早く、世界各地で実現していくのかもしれない。
  

 そんな中今回、「和牛」ブランドでもおなじみの国産牛を頻繁に口にする日本の消費者をターゲットに事業を展開できることに、アレフ・ファームズは胸を躍らせている。

「私たちは、培養肉商品を打ち出す世界で3番目や4番目の企業になるかもしれない。しかし、それは消費者の趣向をしっかりと反映して開発しようとしているからである。」とトゥービア氏は話す。
 「日本の消費者は食肉に対する期待値が高い。私たちはそれを確実に狙いに行きたいだけだ。」
   

参考サイト
Aleph Farms and Mitsubishi Bring Cultivated Meat to Japan

Mitsubishi Pairs With Aleph to Sell Lab-Grown Beef in Japan

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