台湾の代替肉マーケットの動きをまとめてみた
|気候変動を防ぐ目的で動物製品を減らす人は世界的に増加傾向にあり、それに伴いプラントベース食品、とりわけ代替肉製品を開発・販売する企業の数も増えてきている。
台湾では元々宗教的理由から全体に占めるベジタリアン人口の割合が約10%と多いことに加え、近年では環境問題や動物愛護の観点からベジタリアン・ヴィーガンになった若者の数も増え、代替肉市場における需要は今まで以上に高まってきている。
海外の代替肉開発企業は続々と台湾にも進出してきており、一昨年12月には米ビヨンド・ミート(Beyond Meat)の商品が初めて台湾ファミリーマートに売り出され、昨年の9月にはスターバックスでもビヨンド・ミートを使ったコラボ商品3種類が発売された。
また、香港ベンチャー企業グリーン・マンデー発の植物肉「オムニポーク」も、豚肉料理が身近である台湾人にとって大変好評で、様々な形で販売され始めている。例えば昨年1月に、台湾最大のファストフードチェーン店八方雲集でOmni Porkを使った餃子「新蔬食」シリーズが毎週100万個を売り上げるなど話題を呼んだ。
他にもグリーン・マンデーは台湾ファミリーマートとも手を組み、インスタント食品のガパオライスとジャージャー麺をローンチさせた。これらも通常のミンチ肉の代わりにオムニポークが使われている(一部に乳・卵使用)。
この商品は各49元(日本円約175円)で、環境にやさしいインスタント食品がコンビニで手軽に手に入るとベジや環境保護に関心のある消費者から人気だ。
このように盛り上がりを見せてきている台湾代替肉市場が、2020年12月時点でどのような状況なのかを分かりやすくマップにまとめてみた。
- 台湾主要ベジタリアン・ヴィーガン食品/食品メーカー
台湾のベジタリアン・ヴィーガン向け食品/食肉メーカー
- 代替肉スタートアップ
代替肉に特化したスタートアップ企業
- 販売パートナー企業
代替肉の販売提携先である外食/コンビニチェーン
これを見て驚いたのは、世界でも類を見ないほどベジフレンドリーな台湾の代替肉市場に新しく進出してきたスタートアップ企業が海外からのみ、そして販売パートナー企業は現在たったの3社のみということだ。
中国や香港からは続々とスタートアップ企業や大手フードチェーンとのコラボが増えてきているのに比べ、なぜ台湾は代替肉市場の成長が遅いのか。それは、ベジタリアニズムが台湾文化に深く根付いていることが関係していると筆者は考える。
台湾では、宗教的理由により昔からベジタリアンやヴィーガン食を取り入れる人が一定数いて、その需要に応じてたくさんのベジ食品企業が長いこと経営をしてきた。どの企業も約30~50年の歴史を持ち、台湾のベジタリアン・ヴィーガンの人たちから信頼を得ている。それらいわゆる老舗の代替肉市場での力が依然として大きいためか、台湾から代替肉開発に向けたスタートアップがなかなか出てきていない。
また、マップ上の提携パートナー企業の数は現在3社しかいないことになるが、実際のところ台湾ではモスバーガーが2010年の時点ですでにヴィーガンライスバーガーを発売、セブンイレブンやHi Life等のコンビニでも数年前から冷凍の、ヴィーガンライスバーガーが購入することができ、チェーン店での代替肉対応は長いこと適応されてきていた。このことを考慮すると、世界がようやく台湾に追いついてきたとも捉えることができる。
ただしあくまでそれらのヴィーガンバーガーは、基本的にシイタケを炒めたものを肉の代わりに挟んであり、ここ最近代替肉業界を騒がせているビヨンド・ミートやインポシッブル・フーズの商品とは全く異なるものである。
また、ほとんどのベジ食品企業が作る代替肉は大豆やセイタンでできたシンプルなものが多く、ローカルにとってまさに「ベジタリアン食」とカテゴライズされるものが多い。
近年、世界の代替肉開発企業が売り出している製品は、これまでのベジタリアン食を超える近代的でファッショナブルなものであり、ベジ文化が根付いた台湾人にとっても新鮮であった。これが、流行に敏感な台湾人の中で流行り始め、台湾代替肉市場が海外製品を続々と受け入れ始めている理由なのでは、と筆者は考える。
実際に台湾ベジ食品老舗企業たちも、これまでの代替肉製品では十分ではなくなってきていることに気付いたのか、日々改良が進められているようである。
というのも、老舗企業の一つである弘陽が、今年からコストコや特定のスーパーマーケットで自社の代替肉製品「Vveat」を発売開始したり、また新哲や三機といった企業も、より本物に近い代替肉を開発・販売し始めるなどの動きが起こっているのだ。
まとめ
長いことベジタリアン食と関わってきた台湾だが、ビヨンド・ミートなど海外の代替肉開発企業の参入やベジタリアン・ヴィーガンが仏教徒だけでなく環境保全・動物愛護活動家にも増えてきていることにより、ベジタリアン食を食べるということは従来のシンプルで素朴なものから、かっこいい現代的なものへと移行しているように感じる。
今後代替肉開発企業には、誰からも受け入れられるエキサイティングな製品づくりが求められることは確かだろう。