昆虫から作る培養肉の利点とは

今回は、昆虫から作られる培養肉の可能性について解説する。従来の食品に代替し得るとして、昨今注目され始めている昆虫食の紹介をしつつ、昆虫をタンパク源として培養肉に利用する利点を考察する。

目次

1.注目される昆虫食
 ―昆虫食の利点
 ー昆虫食の例
2.昆虫の培養肉の利点
3.今後(見込み)

引用元:Futurenaut

            

1. 注目される昆虫食

 「昆虫を食べるなんて気持ち悪い!」と想像する人が多いかもしれないが、将来の食糧危機の解決策の選択肢の一つとして提案されている。FAO(国際連合食糧農業機関)が2003年に出した報告書を機に、未来のタンパク質の供給源として注目され始めた。国内でも、都内に昆虫食専門レストランや昆虫自動販売機などが現に存在する。

引用元:@DIME

 では、なぜ昆虫食が解決策の一つとして提案されているのだろうか。FAOの報告書によると、以下の点などが挙げられる。

●昆虫食の利点

⑴栄養が豊富

多くの昆虫はタンパク質、カルシウム、鉄分、亜鉛、良質な脂肪などを含んでいて、鶏肉などの主流な食品に代わる健康的で栄養価が高いものであると言われている。

引用元:無印良品

⑵環境負荷が少ない

・温室効果ガスの排出量が少ない。
 昆虫は、家畜よりも温室効果ガスの排出量が圧倒的に少ない。メタンを排出する昆虫類はごく一部のみだそうだ。
・飼料生産のための広大な土地を必要としない。
 昆虫は、成長も早く、餌からタンパク質への変換が効率的で、例えば、コオロギに必要な飼料は牛の12分の1の量で済むという。
・さらに、本来廃棄するはずの、残った食品などを餌とできることも資源の節約につながる。

⑶社会的、経済的な理由

 昆虫の採取、飼育は高度な技術を必要とせず、低資本の投資で行える選択肢であることから、女性や土地を持たない人などの社会の貧困層も参入できるという点がある。さらに、昆虫の飼育は、都市部と農村部の両方に生計の機会を与えることができる。

昆虫食の例

・無印良品の「コオロギせんべい」(消費税込190円)

 地球にやさしい未来の食品として無印良品が徳島大学と連携し、作ったコオロギ粉末入りのせんべいである。コオロギをパウダー状にしたものが、練りこまれていて、エビのような香ばしい風味があるそうだ。

引用元:無印良品

・大学生考案「コオロギのゴーフレット」(味はココナッツミルクとチョコレートの2種類あり、味によって値段は異なる)

 こちらのコオロギのゴーフレットは、大学生が開発し、販売しているものである。こちらも、食用コオロギのパウダーを練りこんだものであり、味は、チョコレートとココナッツミルクの二種類がある。

コオロギのゴーフレット(引用元:Futurenaut

 昆虫食も将来の食料危機や、温室効果ガスの排出の点から現在の畜産の代替えとして捉えられる未来の食べ物といえる。そんな二つを組み合わせ、昆虫の培養肉を作ったら、どうなるのだろうか?

 培養肉の最先端で、世界初の培養肉のハンバーガーを作ったタフツ大学の研究によると、昆虫から作る培養肉が牛などの動物から作られるものよりも簡単でより少ない資源で効率よく作れるということだ。

2. 昆虫の培養肉の利点

・血清を必要としない
 細胞を培養するためには栄養素である血清(血液が凝固した時、上澄みにできる淡黄色の液体成分のこと)が必要となるが、これは高価なうえに、動物を殺さなくてはならないという倫理的な問題がある。しかし、昆虫の場合は無血清で培養できることが大半であるという。

・細胞を培養する際の環境
 脊椎動物よりも昆虫などの無脊椎動物の方が細胞が丈夫であり、様々な気温やph値などの環境変化に適応ができるため、研究室などの培養する環境を整えることが容易であるという。

・大規模生産が容易
 さらには、昆虫の細胞は丈夫なうえに、繁殖能力が高く、細胞を増殖させることが容易である。また前述したように、血清を用いることなく培養が可能なため、大規模生産に移行する際にも、ハードルが低いと考えられている。

3. 今後の展望

 これらの利点から、理論上は昆虫の培養肉には、発展の見込みがあるといえる。しかし、そもそも昆虫を食べることを受け入れる消費者がまだ少ないことから、消費者へのマーケティングのアプローチなども必要と考えらえるだろう。

 昆虫食・昆虫の培養肉などが未来の食べ物から、私たちの身近な食べ物になるまでには、まだ時間がかかりそうである。

参考
Possibilities for Engineered Insect Tissue as a Food Source
Edible insects:Future prospects for food and feed security
コオロギが 地球を救う?
同じ培養肉でも、牛より「昆虫」のほうが高効率? ラボ生まれの“培養昆虫肉”の現実味