ヨーロッパの植物肉開発企業を一挙に紹介
|世界に数多くある植物肉企業だが、今回は、ヨーロッパの企業に焦点を当てて紹介していく。もともと食肉を扱う企業が転身したものや、植物肉を3Dプリントを用いて作る企業、海藻100%の植物肉を作るものまで、様々な植物肉の開発に迫っていく。
●目次
イギリス
・Jack&Bry
・The Meatless Farm Company
・Moving Mountains
・THIS
スペイン
・Foods of Tomorrow (Heura)
・Novameat
●イギリス
・Jack&Bry
Jack&Bryは、2019年に設立されたジャックフルーツ由来の代替肉を開発する企業である。世界で初めて、ジャックフルーツのペパロニ・スライスを発売した。 また、ジャックフルーツを使ったハンバーガー、ソーセージ、ミンチなどの商品をサイトで販売している。
食感は肉に似ているが、トロピカルフルーツであるジャックフルーツには、ビタミン、ミネラル、カリウム、食物繊維、その他多くの抗炎症作用が含まれているそうだ。
・The Meatless Farm Company
The Meatless Farm Companyは、2016年に設立され、イギリスのLeeds(リーズ)に拠点を置く植物性代替肉の開発に取り組んでいるスタートアップである。同社の植物性ビーフには、大豆たんぱく質とエンドウたんぱく質に加え、色づけのために※ビートルートを使用している。その他にも、植物性ポーク、植物性チキン、植物性ソーセージなども取り扱っている。
※ビーツのこと。
2019年には、イギリスのパブチェーンであるWetherspoons (ウェザースプーン)に、史上初の植物性ハンバーガーを供給する契約を結んだ。また、イギリスの大手スーパー数社にすでに導入されていた同社のミンチとソーセージは、Brakes社(ケータリングなどを行う大手フードサービス卸売り業者)との提携により、卸売販売が可能となった。
特徴としては、同社がヨーロッパの植物代替肉のスタートアップとしては、数少ないアメリカの市場に戦いを挑んでいる企業だということだ。同社はアメリカの43州の450以上のホールフーズの店舗で販売する契約を結んでいる。ハンバーガー2個入りを5.99ドル(約654円)で販売しており、本物の肉よりは少し高いが、Beyond Meat社の製品と同じような価格帯である。
・Moving Mountains
2016年にロンドンで設立された植物性代替肉の企業である。同社の植物性の牛肉製品を「フレキシタリアンバーガー」と称し、肉好きをも魅了する商品だと話す。Beyond Meat社のハンバーガーと同様に、ビートルートの果汁を使用しており、話題になっている「ブリーディングミート効果(bleeding meat effect)」をもたらしている。
同社の植物肉の原材料としては、エンドウたんぱく、小麦たんぱく、大豆たんぱく、マッシュルームなどが用いられている。
2018年に、最初の商品として、植物性バーガーを発売し、その後、2019年には、「ホットドッグ」と「ソーセージ」も開発、発売した。同商品らは、その肉らしい味と食感がメディアや消費者から広く評価された。さらに、ミンチ、ミートボール、フィッシュフライなどの商品もある。
ヨーロッパのハードロックカフェや、スペインのチェーン店であるCarls Jr、Tony Roma、Tommy Melsなど、ヨーロッパ中の2,000以上のレストランで提供されている。昨年初頭に、Sainsbury’sはイギリスのスーパーマーケットとしては初めて、Moving Mountainsの「cook-at-home」シリーズを発売し、ソーセージバーガーの導入が行われた。
それ以降、世界中で多くの小売店が同社の商品を取り扱うようになり、Jumbo(オランダ)、Coop(スイス)、Spinneys(ドバイ)、Waitrose、Amazon(Prime Now、Fresh UK)、Ocado(イギリス)などで販売されている。
・THIS
2019年初頭に設立されたTHISは、植物性のベーコンやチキンなどの植物肉を取り扱う企業だ。同社は、元ハンバーガーチェーンの社長だった2人が、動物性の肉から植物性の肉への転換を決意して設立したものだ。
同社の植物肉は、主に大豆タンパク、エンドウ豆タンパクなどから作られており、全製品にビタミンB12と鉄分を配合し、栄養不足を解消するのに役立つということだ。
同社の製品は、イギリスのネットスーパーであるOcadoやイギリスのHolland & Barrettなどのショップで販売されているほか、20以上のレストランでも提供されている。
●スペイン
・Foods of Tomorrow
Foods of Tomorrowは、2017年にバルセロナを拠点として、設立された企業である。「Heura」という代替植物肉ブランドで、現在、植物性チキンと植物性ビーフで、全7種類の商品がある。
植物性チキンのシリーズには、「Spiced Chunks」「Mediterranean Chunks」「Spiced Tacos」「Original Strips」「Original Chunks」の4種類。植物性ビーフのシリーズには、「Heura Meatballs」「Burger Heura」の2種類がある。
同社の植物肉の原材料としては、大豆濃縮物、ヒマワリ油などが使用されている。現在、ヨーロッパ、アジア、北米、南米の3,000以上の店舗で製品を販売されている。
・Novameat
Novameatは、3Dプリントの技術を用いて、植物性のステーキや豚肉を開発している企業だ。その原材料には、エンドウ豆、海藻、ビーツの汁などが使われ、これらは筋肉組織を再現するために細かい繊維状に押し出されているということだ。
同社の3Dプリントで作られた植物性ステーキは昨年、スペインとイタリアの一部の店舗で提供され、今年はその販売網を拡大していく。
●オランダ
・Seamore
Seamoreは、2015年にアムステルダムを拠点に設立されたスタートアップである。海藻100%の植物性ベーコンを生産している。また、植物性代替肉だけでなく、海藻から作ったパスタやパン、チップス、トルティーヤの生地などの商品を取り扱っている。
なぜ、これほどまでに海藻を一面に押し出した商品ラインナップなのだろうか。それは創業者のWillem Sodderland氏が、イビサ島に家族旅行で訪れた際にレストランで、注文した「海藻サラダ」とパスタを見間違えるほど、その海藻が料理として素晴らしいものであったことがきかっけであった。その後、海藻を使用した健康かつ、料理の新たな可能性を追求することとなる。
・Meatless
Meatlessはもともと食肉加工会社であったが、世界が変化していることを認識し、プラントベースの製品を生産し始めた企業である。2005年、彼らは思い切って既存の食肉加工工場の隣の建物に生産ラインを建設し、年間1,500トンの生産能力を持つ企業を立ち上げた。さらに、2007年には同社はもともとあった食肉加工部門を売却し、現在は野菜原料の開発と生産に注力している。
同社の売りは、植物肉に 「ジューシー」な食感を与えることだ。実際に植物肉のバーガーなどを作るのではなく、植物性の肉の代替となる材料に焦点を当てている。ベジタリアン・ヴィーガン向け加工業者にその材料を供給し、植物肉などを生産する企業を支えているということである。
使用される具体的な製品は、ハンバーガー、ミンチ、チキンナゲット、ピザのトッピング、シュニッツェル、スナック、ラザニア等。その他多くの用途で、基本素材や食感を出すための素材としても使用されている。
使用している主な原料の一つには、ルピナスという植物がある。これは、ピーナッツと同じ仲間の植物で、大豆に代わる可能性のある健康食品として注目されている。その他にも、そら豆、エンドウ豆、キヌア、ライスフレークなどをベースにした製品も取り扱われている。
・Vivera
Viveraもともと食肉製品を販売していた企業で1990年に設立された。しかし最近ではヴィーガン市場のみを対象とした製品を販売するようになった。
同社の人気製品の一つは植物性のステーキ「Plant Steak」(写真)だ。その他にも、植物性のハンバーガーやミンチ、ミートボール、ベーコン、ケバブなどあらゆる商品を扱っており、鉄分、ビタミンB12などの栄養素を含んでいる。
主な原材料としては、大豆、ひよこ豆、とうもろこし、米、じゃがいもなどが用いられている。設立から数年の間に広範な流通ネットワークを構築し、現在ではヨーロッパ25カ国のスーパーマーケットで製品を販売している。
●スイス
・Planted
Plantedは、チューリッヒを拠点に2019年に設立された植物肉の開発を行う企業である。2019年に初めてエンドウ豆たんぱくとエンドウ豆の食物繊維から作った植物性チキンを発売した。それ以来、バーガーや、タコスに合うプルドポークや、ケバブなどの商品を販売している。
同社の商品は、スイス内で、3,000以上の販売拠点があるだけでなく、ドイツのスーパーマーケットのEdeka、オーストリアのスーパーマーケットのSparなどでも販売されている。
食肉生産現場は、実際に商品を手に取る消費者にとって非常に内部が見えづらい。スーパーマーケットで包装された肉を買えば、その背後にあるものを都合よく隠すことができる。そこで彼らの生産施設では、ガラス張りの生産施設で消費者に対して、完全にオープンに製品の生産を行っているということだ。製品がどのように生産されているのか、誰でも、見ることが可能だ。また、ビストロやイベントルーム、ガイドツアーなども行っている。
●まとめ
今後もプラントベース食品の需要に伴い、植物肉の普及のさらなる広がりが予想される。今回紹介したヨーロッパのプラントベース商品が、日本でも手に入れることができる日を楽しみにしたい。
参考
Seven plant-based food startups serving up vegan meat in Europe
Most realistic’ plant-based steak revealed
Switzerland alt-meat firm Planted backed in funding round