EU、ベジバーガーも「バーガー」と認める

 10月23日、欧州連合(EU)は植物性の代替肉製品を「肉」として表示してもいいとの判決を下した。ベジバーガーやベジソーセージを「プラントベースディスク」や「プラントベースチューブ」という名称に変更する改正案は却下された。この投票では環境保護主義者、医療関係者、プラントベース製品生産者の勝利となり、代替肉表記は消費者が情報に基づいた選択をするのに役立つと彼らはコメントしている。

 グッド・フード・インスティテュート(GFI)のポリシーマネージャーのエレナ・ウォルデン氏は、同組織が最近発表した論説でこのように書いている。

 「人々は間違って植物性の肉を買っているのではない。彼らは、代替肉製品が健康、環境、動物福祉のために利点があることを認識しているので、それを購入している」。
     

 一方、食肉業界や畜産農家は、「肉」という表記では消費者を混乱させると主張する。また、いわゆる「ベジバーガー」表記に反対する人々は、プラントベース製品が高度に加工されているにも関わらず、肉よりも健康的な代替品としてブランド化されているとも指摘している。

 「これは明らかに文化の乗っ取りだと言えるだろう。一部の販売代理店はこれを利用して、代替品に置き換えても栄養摂取に影響はないとの見解を広めることで、意図的に消費者を混乱させようとしている」と、畜産農家で、欧州農民組合コパ・コゲカで牛肉・子牛肉作業部会長を務めるジャン・ピエール・フルーリー氏はコメントしている。
     

 The House of Lords EU Energy and Environment Sub-Committeeの世論調査によれば、プラントベース製品を誤って購入した人の割合は4%にも満たないという。
 また欧州消費者団体(European Consumer Organization)の調査では、68%の人々は肉の代替品として売り出されていても、それが明確に表示されていれば気にしないと答えている。

 一方同じ週に、EUでは乳製品の代替品を厳しく規制する改正案が可決された。2017年、欧州司法裁判所は、アーモンドミルクのような乳製品の代替品を「ミルク」「クリーム」「バター」「チーズ」と呼ぶことはできないとの判決を下した。

 今回の改正では、生産者がプラントベース製品を「乳製品に似ている」「乳製品スタイルである」「クリーミー」と表現することを禁止しており、より厳しい規則となった。この乳製品の改正案はすぐには発効しない見込みで、EU加盟国政府はEU理事会との交渉を控えている。

 今回のEUでの肉の表記に関する議論はひとまず決着がついたものの、代替肉をめぐる論争は今後も続く見込みだ。イギリス、オランダ、ドイツは独自の禁止措置の実施を検討している。また今年の夏、フランスは代替肉について「肉」を使った用語を禁止した。
 アメリカでも同様の議論が起こっており、アーカンソー州、ルイジアナ州、ミシシッピ州、ミズーリ州、ノースダコタ州、サウスダコタ州、オクラホマ州、ワイオミング州では、企業がプラントベース食品を「肉」「ハンバーガー」「ソーセージ」「ジャーキー」として販売することを禁止している。

 これらはすべて、世界的に肉の消費量が大幅に減少している状況下での出来事だ。国連食糧農業機関の最近の報告書によると、世界的な一人当たりの食肉消費量は10年ぶりの低水準にせまっている。ヨーロッパでは2015年以降、プラントベース製品の売上が73%増加した。

 「肉」かどうかはさておき、世界の代替肉製品市場は2026年までに81億ドル(約8,479億円)の市場規模になると予想されている。
   

参考サイト: https://foodtank.com/news/2020/10/a-veggie-burger-is-still-a-burger-says-eu/